英語関係の書物の間違いを指摘するメールを出版社や著者に送ったことが、今までに4回ある。
英語関係の書物の間違いを指摘するメールを出版社や著者に送ったことが、今までに4回ある。これはあら探しをするのを趣味にしているわけではなく、書物の記述を正確にすることが、正しい英語教育のために必要なものだと認識しているからだ(ということにしておく)。著者もしくは出版社から反応は、四者四様である。
①素直に間違いを認める
②反論してくる
③キレる
④無視する
①の例については以前書いたが、今回は②の例について書いてみようと思う。(ちなみに③の例は、東京でTOEIC、TOEFL専門校を運営する某氏である)
ネイティヴと話をしていて、ある本(英語表現集)の中にでている“launch an artificial satellite”という表現が不自然だと指摘された。そのネイティヴは、launchするsatelliteはartificialに決まっているので、わざわざartificialという形容詞をつける必要はないという。
そのことを指摘するメールを出版社に送ると、このような答えが返ってきた。
「artificial satelliteという表現の使用例をインターネットで検索してみるとかなりの数があるので、決して特殊な表現ではない。ネイティヴといってもいろいろな人がいる。中には教養のない人もいるので、ネイティヴの指摘が必ずしも正しいとは限らない。」
とのこと。まるで私の知り合いが「教養のないネイティヴ」に分類されるかのような言い方である。
確かに“an artificial satellite”の用例を検索すると76,800件ある。(検索地域はアメリカに限定。ヒットする数は日々変わるが、これはこの記事を書いている時点での数である。) しかし、ここで問題にしているのはartificial satelliteという表現ではなく、launch an artificial satelliteという表現である。そこでlaunch an artificial satelliteという表現を検索してみると
launch an artificial satellite 32,500件
launched an artificial satelliteと動詞を過去形・過去分詞にしてみると、60件
artificialをとってlaunch a satelliteで検索してみると 183,000件
launched a satellite 69,500件
その差は歴然としている。
したがって、“launch an artificial satellite”という表現は間違いではないが、artificialを入れないほうがより自然になると言って、間違いないだろう。
前の反論に対してこの事実を出版社にメールでつきつけたが、このことについては反論がなかった。そしてこの本は、いつの間に店頭から消えていった…
百人一首の英訳を紹介します。
百人一首の英訳を紹介します。
“Ogura Hyakunin Isshu” is an ancient anthology of one hundred tanka,
Japanese poem of thirty-one syllables, by one hundred poets.
きみがため おしからざりし いのちさえ ながくもがなと おもいけるかな
I didn’t used to be afraid of losing my life for you, but now I love you so
dearly that I would rather live long with you.
わすれじの ゆくすえまでは かたければ きょうをかぎりの いのちともがな
You promised me that you would love me forever but it is not guaranteed because human mind changes easily. I would rather die today when I’m happiest.
みせばやな おじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかわらず
I’d like to show you my sleeves. Their colour has changed with my tears
because I always miss you and can’t stop shedding tears. Even fishermen’s sleeves in Ojima never change their colour though they get wetter and wetter.
さびしさに やどをたちいでて ながむれば いずこもおなじ あきのゆうぐれ
One day in autumn I left home at sunset time in too much loneliness and
looked around, only to find there was loneliness everywhere.
英訳する場合、歌の裏に隠された読み手の心情も説明しないと理解できないので、どうしても長い文になってしまいます。もっと簡潔な英文にまとめられるのかもしれませんが、これだけの心情をたった31文字におさめた短歌というのはすごいと思います。
「夏目漱石」と言えば、もちろん明治時代を代表する文豪として名高いのはもちろんですが、「英語教師」としても非常に優秀な先生でした。
「夏目漱石」と言えば、もちろん明治時代を代表する文豪として名高いのはもちろんですが、もう一つの顔として「英語教師」としても非常に優秀な先生だったというのは有名な話です。
東京帝国大学(今の東京大学)で英文学の講師としてシェークスピアの講義などをしていましたが、生徒からの人気は絶大で教室に入りきらないくらい生徒が集まっていたそうです。
そんな漱石は愛媛の松山中学で1年、熊本の第五高等学校で4年、英語教師として勤めています。松山中学での教師生活は小説『坊っちゃん』の中で時折垣間見えますよね。
そこで、漱石が五高時代に作成した「入試問題」に次のようなものがあります。
和訳しなさい。
1.He made up his mind never to give it up.
2.No sooner was the new Czar in power than he set about improving his country.
解答は、
1.彼は一度決意したら決してそれをあきらめなかった。
2.新しい(ロシアの)皇帝は即位するとすぐに国の再建に取り掛かった。
どうですか?現在の入試問題と比べてもそれほど変わらないような気がしますが・・・
ちなみに漱石の生徒たちは、漱石が試験に出すのは必ず難しい箇所だから、そういう部分を集めておけば大抵そこが出題されるので、ヤマを張るのが簡単だったようです。いつの時代も生徒は先生のことをお見通しなんですね。
自然で正しい表現というのは難しいものですね!
Please think about the following.
かたいステーキ (hard steak)
タクシー料金 (a taxi fee)
彼を(じろじろ)見る (look at him)
Are thesr correct expressions? No. All of them are unnatural. They should be;
tough steak
a taxi fare
gaze at him
Natural and correct expressons are difficult, aren’t they?
通訳者・翻訳者にさえも、自然で正しい表現というのは難しいものでは?
日本語には「ことわざ」「金言」「格言」って多いですよね。
実は、英語も日本語に負けず劣らず格言(proverbs)が豊富なんです。それに英語の格言から日本語のことわざになったものも意外と多いです。
例えば、”Everybody’s business is nobody’s business.” 日本語にできますか。
「共同責任は無責任」という訳語が当てられています。
「光陰矢のごとし」を英語にすると・・・
“Time flies like an arrow.”なんですが、単に”Time flies.”の形で使われるのが一般的だそうです。
ところで、この英文をコンピューターの翻訳ソフトで翻訳させると、なんと驚くべきことに6通りぐらいの意味に解釈できるそうです。例えば、「一本の矢のような蠅の速度を計測せよ」なんて奇妙な訳にもなるみたいです。中でもすごいのが、
「タイム蠅は一本の矢を好む」! 「タイム蠅」って・・・何?
コンピューターは確かに人間よりも賢いと思える時がありますが、こんな支離滅裂な翻訳をするのではまだまだ翻訳という作業は人間の方がよほど賢いと言えますね。